結婚式

 


 

 朝の食卓で食後のコーヒーを啜りながら雑誌に目を落とすヒイロの耳に、聞きなれないコトバが飛び込んできた。その自分たち、もしかしたら自分だけなのだろうか?、には何の関係もなさそうなそのコトバに驚いて、雑誌から目を上げてキッチンで朝食の後片付けをしているはずの声の主に視線を向けると、既に片付けが済んだのかマグカップを手にしたデュオがカウンターの向こう側から微笑ながらヒイロを見ていた。

「・・・・・・・・ケッコンシキ、か?」

「そ、結婚式!」

 もしかしたら聞き違いかと思って聞き直すヒイロに、デュオは更に嬉しそう笑って思い切り肯定する返事を返した。

「結婚式を、挙げるのか?」 

「おれたち結婚しただろ?だったら結婚式をするのが当たり前ぢゃん!」

 そう、2人はつい最近結婚した。初めて好意を持った相手といつでも一緒にいたいと願ったヒイロが合法的にその相手のデュオを手にいれる為にプロポーズして、元々ヒイロのことが気になって気になってしかたがなかったデュオがそれを受けた。

 で、ヒイロの籍にデュオが入籍する形で婚姻届を出したのは、2週間前のことだ。

 結婚することが決まったとき、ヒイロは籍を入れればそれでいいのだと思った。信じているわけでもないし神の前で誓うまでもなく、この先ずっとデュオと共に生きていく決心など、彼を合法的に手に入れようと思った時からできていた。

「・・・・・・挙げたいのか?

 だからヒイロは結婚式など頭の中になくてどうしたいのかなどと考えたこともなかったが、どうやらデュオは違ったようだ。

「なんだよ。ヒイロは挙げたくないのか?」

 ヒイロの新たな問いを聞くとそれまでの嬉しそうな表情が一気に曇り、明らかに気落ちした悲しそうな目を向けてきた。ヒイロは慌ててコーヒーカップをテーブルの上に置いて、椅子が後ろに倒れる勢いでもって立ち上がっていた。まさかデュオがコレほど落胆した表情を見せるとは思いもしなかったのだ。

「い、いや、・・・・俺は、結婚式など、・・・・考えたこともなかったから・・・・・・いや、挙げたいとか挙げたくないとか、それ以前の問題で・・・・俺は、俺は・・・・・・だから、挙げたくないわけではなくて・・・・その・・・・だから・・・・神など信じていないし、いや、だからどうでもいいわけではなくて・・・・・・」

 プロポーズのときでさえ恥ずかしげもなくキッパリハッキリ一言で「結婚したい」と云い切ったヒイロなのに、デュオがちょっと表情を曇らせただけでらしくなく言葉に詰まる。その様子が一生懸命言葉を捜しているようで可愛くて、何だか笑えてくる。

 デュオはキッチンからダイニングテーブルの前に立ち尽くすヒイロの横を通りすぎた。途中までデュオの姿を目で追っていたヒイロも、悲しげな表情のまま自分の横を通り抜けようとするデュオを、振り向いてまでして姿を追うことしかできなかった。

 こんなふうに相手の表情に一喜一憂するなんておれたちかなりラブラブだよな〜と思いながら、デュオは自分の失言に硬直しているヒイロに背後から抱きついた。いつの間にかヒイロはデュオの腕の中に丁度収まる大きさになっていて、腕ごと身体を抱き込んでもちゃんと前で手が組める。

「大丈夫だよ、ヒイロ。おまえの云いたいことは解っているからさ」

「デュオ・・・・」

 焦っていたヒイロが、それでも体格差を見せつけられるような体勢が気に入らなくて、自由に動かせる肘を曲げて自分の身体を拘束するように回されたデュオの腕に手をかけた。この体勢が少し恥ずかしかったのもあって、ヒイロは背後から回された彼の腕を振り払うように身じろぎをする。

 ヒイロがこんな身体の接触にまだ慣れてないことは承知しているけれど、これからデュオが彼に告白しようとしていることは面と向ってしまったら赤面してしまいそうで、この際だからヒイロに少し我慢してもらおうと、デュオはヒイロを抱きしめる腕に少しだけ力を込めた。

「おれだって神サマなんか信じちゃないさ。けどおれに名前をくれた人、おれを初めて大切にしてくれた人たちは信じてた。だから、これがおれが選んだ相手だって神サマから報告してもらうんだ・・・・・・・」

「・・・・名前をくれた人?」

「ああ。おれはガキの頃教会で世話になったってた。マックスウェルってのは、身寄りがなくてストリートキッドの真似事してたおれを引き取ってくれた神父の名前なんだ」

「マックスウェル教会か?」

 あの事件は多くの一般市民の犠牲者が出たことで、L2コロニーの公式記録にも「マックスウェル教会の悲劇」として記録が残っている事件だ。と云うことは、デュオはあの事件でのただ1人の生き残りなのだろうか?

「へー、知ってるんだ・・・・まぁ、記録にも載ってるしな。・・・・・・それまでおれは他人を信じたら生きて行けないようなトコロで育ってきた。誰も守ってくれないし、誰も当てにできなかった。そんなおれに神父とシスターが教えてくれた。ホントは一人ぢゃ生きて行けないこととか、他人を信じて受け入れることとか・・・・アノ人たちがいなかったら、きっと今のおれはなかっただろうな。おまえの思いを受け入れることもできなかった。だからアノ人たちにだけは知らせたいんだ。その昔のおれそっくりのおまえの心を開いたのはおれだって自慢するんだ」

 彼にとってマックスウェル教会での事件は思い出したくない類のことのはずなのに、ことあるごとにこうして行動の指標として思い起こされる記憶。神を信じてない、名前を付けてくれた人も大切にしてくれた人もいなかったヒイロには、デュオが云っていることの半分の意味もわからなかった。けれど彼が挙げたいと望むのなら、ヒイロが反対する理由もない。

「事件の3年後、マックスウェル教会は復興されているはずだ」

 ヒイロは身体の前に組まれたデュオの手をそっと握る。

「えっ・・・・・・?」

 驚いてデュオの力が緩んだ隙に、その腕の中でヒイロはくるりと身体の向きを変えた。真っ直ぐ捕らえたデュオの表情は驚いたように目は見開いているけれど、横を通りすぎた時のような悲しげな表情は読み取れなくてヒイロはホッと息を吐き出した。

「マックスウェル教会で式を挙げよう」

「・・・・ホントに?」

「そこでお前を大切にしてくれた奴らに誓ってやる。この先は俺がお前を守ると・・・・」

 見上げたデュオの目が点になっている・・・・・・なんだろう、この反応は?

 ヒイロが疑問に思って見詰めた視線の先で、俯いたデュオが肩を震わせている。

「ヒ、ヒイロ〜ぉ・・・・・・」

 声が、デュオの声も震えていて・・・・・・コレはもしかして泣いている?

「・・・・・デュオ」

 こんな可愛い反応を返してくれるデュオが愛しくて、ヒイロは彼を抱きしめようと腕を伸ばした。

 と、そのとき、いきなりデュオが手で口元を覆い隠してその場にしゃがみ込んでしまった。

「!!」

 驚いて手を引いたヒイロの目の前で、デュオが吹き出した。

「あはははははははは、はっはははははっ!・・・・ヒ、ヒイロっ!おまえ、それ、や、止めてくれ〜〜〜〜!!ぅははははは、ひゃははははは・・・・・・に、似合わねぇ〜〜〜!全然っ、似合わねぇでやんの!・・・・・ぶっはははは・・・・・・・・・・・・・・」

 どうしてデュオが突然笑い出したのかはさっぱり理解不能だったが、なんとなく馬鹿にされたのだということは解ったらしいヒイロが、眉間に皺を寄せてデュオを睨み付けていた。

 

 

 2人はデュオの希望通りL2のマックスウェル教会で式を挙げる運びとなった。

 2人だけで挙げるつもりが立会人が必要と云うことで、トロワに頼んだのが間違いの元だった。

 いや、トロワはヒイロから其の弄いを受けたとき、丁度その場に居合わせたキャスリンとカトルに二人が結婚するらしいことと立会人を引き受けたことを、何だったのかと問われたから答えただけだ。なのにヒイロとデュオが結婚すると云う情報は瞬く間に広がって、簡素に済ませてしまおうとしていた結婚式は、2人が知らない間に式後のパーティーの手配までされていて、ごく一般的なレベルのイベントにまで話が進んでしまっていた。

 そして何を勘違いしたのか、カトルから純白の燕尾服とウエディングドレスのセット一式がお祝いの品として届けられた。

「なに考えてるんだ、カトルの奴は・・・・」

「お前ならドレスでも似合うと思ったんだろ」

 ヒイロがそう云ったのは、燕尾服がデュオが袖を通すにしては多少小さめに出来ていたからで、ヒイロが羽織って見るとまるでオーダーメイドの品のようにぴったりと身体にフィットしたからだ。

「なんで結婚式ってゆー一生に一度の晴れ舞台で、任務でもないのに女装しなけりゃならねーんだよ。冗談キツイぜ、ったくよぉ〜」

 デュオは箱の中からとても一人分の衣装とは思えないかさばった白い布切れを摘み上げてため息をついた。それでも摘み上げたそれを箱の中からずるずる出しているのは、一体どこがこれほどかさばるのか、全体像がどんなモノなのか気になったからだ。

「なるほどな・・・・どうやらカトルは本気らしい」

 二人掛けのソファー一杯に広げられた白のドレスを眺めてヒイロがそう云えば、デュオは返事もせずに自分用に送られてきたらしいソレを睨み付けた。

 この色といい光沢といい肌触りといい、きっと素材は今やアンティークとしてのみ存在する天然シルクで作られた一点物のドレスに違いない。素材の持ち味を生かしたほとんど装飾がないデザインはなるほど、見るだけならデュオの趣味に合ったドレスに違いない。

 出っ張った喉仏を隠すスタンドカラー、筋肉質な二の腕を隠す上腕部が膨らんだ長い袖、くびれのない体のラインを誤魔化すためのウエストで切り替えのないプリンセスライン・・・・・・色と素材と裾の長さを変えれば、それはデュオが任務で女装するときに着る洋服そのもので、カトルが本当に結婚式でデュオに着せるためにコレを送ってきたのだと確認させられたようで、デュオはうんざりとため息をつくことしか出来ない。

 任務で仕方なく女の格好はするものの、真面目に結婚式を挙げようと云うのに女装するのは恥ずかしい。頬は下膨れのままだし髪も女以上に長くしているしヒイロと違って色も白い。でも自分はどこからどう見ても男にしか見えない。

 大体、任務で女装する時は、食事が出来ないほどウエストをぎゅうぎゅうにコルセットで締め付けられたり、満足に身動きが取れないほどぺちゃんこの尻や胸にパットを着けられたり、顔や足や腕や脇のムダ毛の処理までさせられたり、何かと苦労をしているのだ。

 デュオに比べたらヒイロは、体毛は薄いしやや小柄だから誤魔化す箇所は少ない。見た目だけなら完璧に女なのだが、ヒイロは大根で女の演技ができないから女装の任務はデュオに振られるのだ。

「ドレスだけならおまえの方が絶対に似合うよなぁ、おれより小さいし綺麗だし・・・・・・そうだ!せっかくだからおまえ1回着て見ろよ!そのままでも似合うぜ、お前なら、はははははっ!」

 ヒイロも、デュオがズルズル箱の中から引き出した過剰としか思えない布使いをしたそれを眺めて、そしてデュオの言い草を聞かされて眉をしかめた。

「コレはお前用だ。俺には合わない」

 もちろんヒイロにだって、任務以外で女装する趣味はないし、デュオに女装させる趣味もないのだが、デュオはこんな悪ふざけが好きなのだ。

「いいぢゃん、ちょっとだけ、な!大は小を兼ねるって云うしさぁ〜着て見せてくれよ、な、な?」

 そしてヒイロは、デュオのお願いに弱かった。

「・・・・・・仕方ないな」

 この結婚はヒイロが強く望みデュオがそれに答える形で成立した。しかも特にヒイロが望んだわけではないのだが、デュオがヒイロの籍に入籍している。だから例えば今回のこのドレスのようなことから、デュオの方を女扱いしているフシが感じられて、ヒイロもデュオ以上に戸惑っている。だからこんなお願いでも聞いてしまうし、彼がどうしてもドレスが嫌だというなら、自分が着てもいいとも思っている。

「よっしゃ!それぢゃ早く着替えろよ。おまえに先に袖を通させてやる。そしたら次にオレも着てやるからおまえはあっちの燕尾服着て一緒に写真でも撮ってカトルに送りつけてやろうぜ。せっかく衣装の心配までしてくれたことだしぃ〜」

 正装するにしてはウザッタ過ぎる髪をデュオによって七三に整えられた燕尾服のヒイロと、ウエディングドレスを着たまるでオカマなデュオの不気味なツーショットの写真がカトルの元に届けられたのは結婚式の3日前のことで、大いにカトルを慌てさせた。

 そして一体どちらがウエディングドレスを着るべきものなのかヒイロだけが真面目に悩みもしたが、2人とも男なのだからと燕尾服を着ることで話はまとまったのだった。

   

「おぉぉ、なんでお前が腕を出すんだ」

「忘れたのか、ココの中を歩くときは腕を組めと司祭に指示されただろう」

「どちらでもかまわない。さっさと腕を組め」

 式の当日。主役の2人を聖堂に招き入れるウエディングサウンドが流れてくるのを扉の外で聞きながら、ヒイロとデュオそして立会人のトロワの3人が最後の打ち合わせとと称するほとんど言い争いにに近い「打ち合わせ」をしていた。

「だから、どーしておれさまがおまえにエスコートされなけりゃならないの?」

 入場するから腕を組むように云われて、ヒイロもデュオも当然男の立場で、ヒイロは左腕をデュオは右腕をお互いに相手が腕を組みやすいような形にしようとしたが、どうやらヒイロの方が一瞬行動が早かったようだ。で、またかとトロワにらしくない怒鳴り声を上げさせたのだ。

 実はほんの少し前にも、どちらが新郎が立つべき右側に立つのかで揉めたばかりだ。ソレは、デュオより強烈な訓練を受けてきたヒイロが、利き手側を塞がれてしまうことで異常なほどに警戒心を剥き出しにするので、それより少しは我慢できるデュオがヒイロの左側、つまり新婦の位置に立つことで話はついた。

 しかし、エスコートされるつもりはないらしい。

「俺のエスコートが不満なのか」

「あぁ、不満だね。ひとつのことしか目に入らないおまえにエスコートされたら、この先不安が一杯だぜ」

「・・・・随分な云いようだな」

「その通りぢゃないか。おまえみたいに一途なヤツは、誰かによりかかるくらいで丁度いいんだよ。ほら、いいからおれにエスコートされろ」

 デュオの言葉を聞いたヒイロが、すっと彼から目を逸らせて唇を噛み締めた。

 ヒイロにも解っている。工作員としては超一流と云われている自分が、いかに平和で普通の暮らし方を知らないか、一般人としての常識がいかに欠けているかを理解している。だからヒイロにはデュオが必要で、いつでも傍にいて欲しくて彼の気持ちも考えずに自分の思いを押し付けた。そんなところもヒイロは未熟なのだ。

 けれどデュオを守りたい。自分を導いてくれる彼だから大切にしたいのに、今の自分では彼に甘えるばかりで何もできない。それがとても悔しい。

 そんなヒイロの様子を目の当たりにしたトロワは、驚いて馬鹿のように口をポカンと開けてそれを眺めてしまった。だってこんな感情的に表情を変えるヒイロなんて知らない。トロワの知っている彼は、感情のない機械のように無表情だ。それなのに今の彼からは、悔しがっているのがはっきり感じ取れる。

 最初ヒイロがデュオにプロポーズしたのだと聞かされたとき、ヒイロは何を血迷ったのかとトロワは思った。デュオがヒイロのことを必要以上に気にかけていたことは、あの戦争の頃から誰もが知っていることだったが、どちらかと云えばデュオのことを任務遂行の障害物として避けていたらしいヒイロが、まさか彼のことを結婚したいほど好きだったとは思いもしなかった。けれどヒイロの思いは「好き」だからなどと云う生易しいものではなくて「必要」だからと云う切羽詰ったモノだった。そして、ヒイロにこんな表情をさせるデュオだからヒイロはデュオを選んだのだと、このとき初めてトロワはこの結婚の意味を知ったのだ。

「凄いな、オマエは・・・・・」

 そう云ってヒイロの隣のデュオに視線を移せば、彼は台詞とは裏腹な穏やかな笑顔でヒイロを見ている。

「解ったら腕組めよ、ヒイロ」

 これではヒイロはかなわないだろうと思ってトロワが思っていると、それでもいつもの表情に戻ったヒイロが、出されたデュオの右腕に左手をかけようとする。

 そのとき、一瞬早くデュオの腕がヒイロの腕に巻き付いた。

「!!」

「だってヒイロ、ここで誓ってくれるんだろ?これからはおまえがおれを守るってさぁ」

 驚くヒイロに余裕の微笑みで答えるデュオ。

 強引なヒイロにデュオが振り回されるであろうと仲間内では思われていたが、どうやら主導権はデュオの方にありそうだ。

「さあ、入場するぞ」

 あぁ、もう勝手にやってくれ!と思いながら、トロワは誓いの場所へと続く扉を開けたのだった。

 

 祭壇の前で司祭の言葉を聞く2人は、オーソドックスな燕尾服にその身体を包んでいた。

 純白の燕尾服にその年にしてはやや小柄な、しかし無駄のない筋肉をつけた肢体を包んだヒイロは、緊張のためか少し頬を紅く染めて俯き加減だ。司祭の誓いの言葉にかすれ気味の小さな声で、それでもはっきり

「誓います」

と答える。

 一方黒の燕尾服に身を包んだデュオは、普段のおちゃらけた彼からは想像できないほど真剣な眼差しで祭壇を見つめている。ヒイロの次に誓いの言葉を求められても、祭壇の一点を見つめたまま答えない。

 再び司祭に促されても何も答えようとしないデュオに、式の列席者の視線が集まる。

「デュオ」

 それでもヒイロがデュオを呼ぶ声は普段と少しもかわらない。やや低めの落ち着いたトーンのヒイロの声に誘われるたように、式が始まってから初めてデュオの視線が祭壇から外されてヒイロを捕らえる。まるで色を失った顔の中で、そのコバルトブルーのおおきな瞳を更に見開いてヒイロを見つめる。

「誓いの言葉だ」

 その言葉に我に返ったようにデュオはゆっくりと視線を司祭に合わせた。

 三度誓いの言葉を司祭が述べる。

「!」

 ヒイロは一瞬息を飲んだ。司祭の言葉を聞くデュオの瞳が透明な水の幕に覆われているのだ。そして

「はい、誓います」

 ほとんど吐息のように呟いて俯いたデュオの頬に、涙が流れ落ちたのだ。

 ヒイロはなんとなくここで結婚式を挙げたがったデュオの気持ちが解ったような気がした。

 ここは、コロニーに裏切られた時も死を覚悟した時も全てが終わった時も涙を見せなかった彼に涙を出させるほど大切で悲しい思い出が詰まっている場所なのだ。そこでヒイロは「生涯の伴侶として愛し続けること」を彼に誓ったのだ。この場所で2度と彼が涙を見せなくてもいいように・・・・・・

「それでは、誓いのキスを」

 向かい合ったヒイロに握られた両手に視線を落とすように俯くデュオに、ヒイロは下から見上げるようにそっと唇を重ねた。


 

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「やっぱり結婚式なら二人ともタキシードよね!」というお話でした〜(笑)

 

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